魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
性懲りもなく、二度も……。
しかも、隙をついて唇を奪うなんてフェアじゃない。


「なにすんのよっ……!」


私はたっぷり一拍分遅れて、右手を振り上げた。


「おっと。悪いのは足癖だけじゃなかったか」


でも神凪さんは私の行動を読んでいて、あっさりと手首を掴んで阻まれてしまう。


「ひっ、飛行機につられた隙に……卑怯ですっ」

「卑怯で結構。俺にまったく見向きもしない女の気を惹こうっていうんだ、隙くらいついて当然だろ」


神凪さんは憤慨して顔を真っ赤にする私に、悦に入ったように微笑む。


「とは言え、俺も彼女にするなら、断然可愛い女がいい。だから、せいぜい俺好みに可愛くなって、本気で惚れさせて」


盛大なドヤ顔で言って退けたかと思うと、手首の腕時計に目を落とし――。


「じゃ、今夜はこのホテルに泊まりってことでいいね?」

「……は?」


あまりに傲慢な物言いに茫然自失していた私も、なんとか我に返った。


「お前を恋人にしたい理由は説明した。キスも済ませたし、順を踏んだつもりだけど、異論ある?」


不服そうに首を傾げられて、


「ないわけないじゃないですか……!」


背の高い椅子から、勢いよく飛び降りた。


「あ、おい……」

「私、あなたの遊びに付き合う暇はありませんから!」


私を呼び止める彼の声を振り切って、脱兎の如く逃げ出した。
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