魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
この機体は前のフライト後、コックピットからギアを操作する際に少々引っ掛かりがあったと報告があり、私たちのチームがすぐにハンガーに引き取って点検に当たっていた。


通常、フライトとフライトの間のT整備は駐機スポットで行うけど、そこでは整備後にギアを上げ下げして、作動状況を確認することができない。
そのため、次のフライトのコックピットクルーの久遠さんと神凪さんに、ハンガーまで来てもらったのだ。


「報告を受けた作動時の引っ掛かりは、アクチュエーターの動きが鈍くなっていたためと考えられます。アクチュエーターは油圧式ですから、アウターシリンダーとスライディングチューブに窒素ガスと作動オイルを充填する処置を施しました」


私は、手元のタブレットに表示した作業内容を、口頭で伝えた。


「久遠機長。恐れ入りますが、ご確認のサインをお願いします」


タブレットとペンを差し出すと、久遠さんは首を縦に振って受け取ってくれた。
モニターにサラサラとペンを走らせるのを見て、心からの安堵でホッと胸を撫で下ろす。


「ご苦労様」


久遠さんが短い労いと共に、タブレットとペンを返してくれた。


「ありがとうございます。では、シップをスポットに運びます」
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