魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「さっきのは……ええと」

「別に、私には関係ありませんから!」


ちょっと言いにくそうに言い淀む彼を、私は力一杯声を絞って遮った。


「いいから聞けよ」

「私は神凪さんのなんでもない。だから、あなたがどこで誰となにしても、全然」


彼の顔を見られないまま、勢いに任せて口走る。
神凪さんは、口を噤んで黙り込んだ。
先ほど今野さんと対していた時と同じく、なにか言いたそうなのに言いあぐねる。
私は、こくりと喉を鳴らして……。


「関係ないけど……あの人は、佐伯さんの彼女です」

「…………」

「お二人を困らせたり悲しませたりしようっていうなら、許せません」


きっぱりとそれだけ言い切ってから、思い切って彼を振り仰いだ。
そこに、どうしてだか苦しげに顔を歪めた神凪さんを見つけて、ギクッとして言葉をのんだ。
ここでもまた、私の言動に傷ついてそんな顔をしているようで、痛い思いが胸に充満する。


「っ……」


私はそれ以上なにも言えずに、大きく肩を動かして彼の手を振り解いた。
再びくるりと背を向け、地面を蹴って駆け出すけれど――。
今度は神凪さんも、追いかけては来なかった。
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