魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
飛行機から少し離れた場所で見上げると、真下にいては確認できないコックピットの窓も見える。
すると、ちょうどその時、右側の席にいた副操縦士が、スポットを見下ろした。


「……!」


私は勢いよく面を伏せ、目が合う前に逃げた。
三枚の強化ガラスと二枚のビニールという五層構造で、丈夫なコックピットの窓越しでも醸し出されるあのアンニュイな雰囲気……神凪さんに違いない。
私はタイヤにしがみついて、バクバクと音を立てる鼓動を鎮めようとした。


「椎名ー。抱きついたって、タイヤは痛いところを教えてくれないぞ。しっかり目で見て、手で触って確かめろ」


すぐさま、主任から半分苦笑気味の注意を受けて、ハッと我に返る。


「は、はい」


上擦りそうになる声を必死に抑えてタイヤから離れ、大きく肩を動かして息をした。
神凪さんとは、マネージメントセンタービルの前で会って以来四日振り。
あの夜のLINEメッセージを最後に、彼の方から連絡はなかった。


電話の着信に応じず、LINEを既読スルーしているのは私。
常識的に考えて、私の方から返事なりなんなりするべきなのはわかってる。
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