魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「私、今日はこれで上がりなの。何時まででも待ってるから」


そう言いながら、左手首に嵌めた華奢なデザインの腕時計に目を落とした。


「あの、でも……」

「あ。今日は遅番? だったら、夜十時までだっけ」


佐伯さんの彼女だから、整備士の勤務形態には精通しているようだ。
憂い顔を見せたのは、ほんの一瞬。


「それでもいいわ。待ってるから」

「い、いえ。早番です。これの整備が無事終われば、上がりの予定です」


私が答えると、さすがにホッとした様子で胸を撫で下ろす。


「そう? よかった」

「でも……」


神凪さん並みに強引な彼女に困惑して、私は目を泳がせて言い淀んだ。
だけど、今野さんは私の返事を待たない。


「気が向かなかったら、すっぽかしてくれていいから。とりあえず、ラウンジで待ってるね」


私の肩をポンと叩き、颯爽と踵を返した。


「え、あっ……」


私は慌てて、彼女の背中に声をかけた。
だけど今野さんは軽く手を振るだけで、ターミナルビルに戻っていってしまった。
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