魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「そんな、改まらないで。あ、飲み物、コーヒーでいい?」

「え? あ、自分で……」


空いた椅子に荷物を置きながら返事をした私を制して、今野さんはさっさと椅子から降り、ドリンクカウンターの方へ行ってしまった。
――さすがCA。
制服を脱いでも気配り上手。


こんなことでも卑屈になって身を縮め、私は彼女と椅子を一つ空けて腰かけた。
私の分のコーヒーを手に戻ってきた今野さんが、「あら?」と首を傾げる。


「隣に座ってくれないの?」

「すみません。私、仕事終わった後、シャワー浴びずに来てしまったので」

「?」

「えっと……オイル扱ったし、埃塗れで。汚れてるので……」


コーヒーを受け取りながら恐縮して説明する私に、困ったように眉尻を下げた。


「あなたも佐伯君と同じこと言うのね」


苦笑交じりの溜め息を漏らし、元の席に座る。


「佐伯君も、それが口癖。……あ。私、佐伯君の……」

「知ってます。彼女さんですよね」


改まって説明しようとする彼女を、私はテーブルに置いた手に目を落として遮った。
今野さんは私の横顔を窺うように見ていたけれど。


「そっか」


短く相槌を打って、窓に向き直る。
< 85 / 222 >

この作品をシェア

pagetop