病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
「でも、あなたはディートリンデ様と……」
     
 わたしがそう言いかけた瞬間、わたしの身体が乱暴に抱き上げられ、さほど広くない船室のベッドに放り投げられる。
 
「きゃあ!」

 視界が反転し、ベッドに背中を打ち付けて、一瞬、息が止まる。そしてわたしの顔のすぐ上に、圧し掛かるようにしてユードの整った顔が迫っていた。

「ヒッ……!」
「まだ、疑うのですか?」

 ユードの表情が強張り、歪んでいる。疑われ、拒絶され、傷ついている。
 身に覚えのないことで疑われれば、苦しい。わたしもさっき体験した。でも――

 ならば、前回の、あの記憶、これから起こるはずの記憶を、どう説明するのか。
 ――あれは、嘘ではない。夢でもない。以前に間違いなく起きた事実。

 この人はわたしを裏切り、父を冤罪で売り、ディートリンデ様はわたしを捕らえて――
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