病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
「ユード、待っていたのよ! エドがケガをしたの、あなた代わりに護衛を――」
「お断りします。俺はもう、あなたの護衛騎士ではない」
「ユード? 何を言ってるの。いつもは言うことを聞いてくれたじゃない」
「以前、護衛騎士の時ならば、仕事ですから。今はオーベルシュトルフ侯爵家の配下ではございません。侯爵の養子として、ブロムベルク辺境伯の婿になっております。以前のような扱いはご遠慮いただきたく。――ブロムベルクの体面に関わりますので」

 ディートリンデ様は断られたのが信じられないといった表情で、ぽかんとユードと、わたしの顔を見比べている。

「……護衛の方のお怪我はひどいのですか?」

 気まずさを誤魔化そうとわたしが尋ねれば、ディートリンデ様が慌てて言った。

「大したことはないけど、歩き回るのは無理で……でも護衛無しで屋敷に戻ることはできないから――」

 チラチラと、何かを訴えるようにユードに目配せを送っている。――前回、ディートリンデ様をお気の毒に思って、わたしがユードに勧めて送って帰らせたのだった。今回も勧めた方がいいのかしら、と思うそばから、ユードが毅然とした態度で言い放った。

「護衛ならこのヨルクをお連れください。では」

 ユードはきっぱり告げると、わたしの腰に腕を回し、ことさらに身体を密着させて親しさをアピールしつつ、わたしに向けて「帰りましょう」と、にっこり微笑んで見せた。――それこそ、破壊力満点の蕩ける笑顔で!
  
 くるりと向きを変え、歩き出した背後で、ディートリンデ様が叫んだ。

「どうして、ユード! 約束が違うわ!」
  
 ――つまり、もともと約束してたってこと? やっぱり本当は付き合っているんじゃ――
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