先生と私の三ヶ月
 先生の唇が触れた場所は限りなく唇に近い私の頬。

 先生、唇にはキスをしないって約束を守ってくれているんだ。配慮してもらえているのは嬉しい。でも、なんか、お預けをくらったというか、心に引っかかるというか……。だけど、これでいいのよ。私は結婚しているんだから。

 先生の唇がゆっくりと離れた。
 目が合うと、先生が切なそうに瞳を細める。

「結婚する前に会いたかったな」
 先生が私の腰を抱き支えながら口にした。
 腰に触れている先生の手が少しだけ熱く感じる。

「私が結婚する前ですか?」
「いや、俺が結婚する前」
 フッと先生が口の端を上げた。

「えっ、先生が結婚したの20歳の時ですよね? 私、その時9歳ですよ」
「ガリ子は9歳なのか。手を出したら俺は犯罪者だな」
「間違いなく、犯罪者です」
「でも、9歳でもガリ子は可愛いだろうな。こんな風に膝の上に抱きたくなるぐらいなんだろうな」
「なんか先生、変態発言に聞こえますけど」
「つれないな。ガリ子は。どんな年齢でも興味を持ってもらえて嬉しい! とかって思わないのか?」
「全く思いません」
 先生が大げさに眉を上げて信じられないという表情を浮かべた。

「冷たいな。俺の恋人は」
 チュッと軽く先生がまた私の頬にキスをした。
 不意打ちのチュウ! いや、それよりも今、先生、恋人って言った? 俺の恋人って……!

 トントンとガラスが叩かれた。
 視線を向けると黒田さんが立っていた。

 きゃ! 恥ずかしい。
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