先生と私の三ヶ月
 リビングから玄関ホールに出ると、茶色の紙袋を持ったガリ子が立っていた。暑かったのか、出る時に着ていたグレーの上着は脱ぎ、ブラウスとグレーのパンツ姿だ。
 Tシャツジーパン以外の姿が新鮮だ。ガリ子はスタイルがいいから何を着ても似合う。ダサいのは眼鏡だけだ。

「おかえり。遅かったな」
「先生、ゆっくりして来ていいって言ってたじゃないですか」
 何かいつもと様子が違うような。

「ああ。そうだな」
 近くに行くと酒の匂いがした。

「お前、もしかして酒、飲んでるか?」
「いけませんか?」
 目を細めて睨まれた。これはあまり関わらない方がいいかもしれない。
「いや」
「駅前のバーで飲んでましたよ。ママさんが超いい人で私の話を沢山聞いてくれて。それでお酒も美味しくて」
「それは良かったな。黒田から預かった物は?」
「ああ。これですね」
 紙袋をガリ子が差し出した。

「ありがとう。助かるよ」
 受け取ると、ガリ子がまた俺を睨んだ。

「先生、私の身体が目当てでアシスタントにしたんですか?」
「はあ?」
「だから、私の身体が目当てなんですか?」
 顔が怒っている。
 もしや、昼間の事を怒っているのか?

「どうなんですか?」
 ガリ子に睨まれる。

「私は先生に弄ばれているんですか?」
 ある意味そうかもしれない。恋愛小説を書く為に利用はしている。

「あっ、やっぱりそうなんだ!」
 大げさにガリ子が驚いた。

「このケダモノ!」
「け、ケダモノ……?」
 待て。妄想の中ではしているが、現実ではそこまで言われるような事はしていない。
 キスだってお行儀よくルールを守って、頬にしかしていないし。

「手当たり次第に、この女ったらし!」
 ガリ子が平手で俺の腕とか肩とか、胸を叩いて来た。
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