先生と私の三ヶ月
「私の事、大好きで、先生が欲しいのは私しかいないって……信じていいの?」
 細い背中から出る不安気な声に胸を締め付けられる。
 ガリ子は俺の言葉を受け止めようとしている。

「信じてくれ」
 そばに座り、細い背中を撫でた。

「先生、私怖い。とっても怖いの」
「俺に襲われそうでか?」
 ガリ子が否定するように頭を振った。それからゆっくりと起き上がり、俺を見た。

「先生から離れられなくなりそうで怖いの。これ以上好きになったらいけないと思うけど、毎日、先生の事を好きになるの。私こんな風に男の人を好きになったの、先生が初めてで、毎日戸惑って、気持ちの行き場所がなくて。今日だって上原さんの話を聞いてショックだった。私だけの先生だと思っていたから嫉妬したの。先生が私以外の人と仲良くするのが嫌なの。それでお酒を飲んだけど、ずっと胸が苦しくて」

 胸が熱くなる。
 まさかガリ子がここまで俺を想ってくれていたなんて……。
 俺の一方的な想いだと思っていたが、俺たちは両想いだったんだ。
 
 もうダメだ。我慢できない。

「ガリ子、いや、今日子。どこにも行くな。ずっと俺のそばにいろ」
 こんな事を言う資格はないと思っていたが、もう気持ちを抑えられない。
 旦那の所に帰したくない。

「私、結婚しているよ」
「そんなのどうでもいい」
 ガリ子を抱きしめた。

「でも私、9月30日になったら帰らなきゃ」
「今日子、俺のそばにいてくれ。お前なしでもう生きていけない」
「せ、先生……」
「ノーなら、避けろ」
 顔を近づけると、薄く涙が浮かんだ瞳が戸惑ったように俺を見つめる。心の中で3秒数えてから、アルコールの匂いがする唇に深く口づけた。

 夢にまで見たキスだった。
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