先生と私の三ヶ月
「私のバッグどこ?」

 フランシスさんがわからないという表情を浮かべた。

「where is my bag?」

 英語でもう一度聞き直すとフランシスさんが流暢な英語で私の荷物は枕元にある物だけしかないと言った。

 嘘でしょ……。 

 まさか、盗まれたの?

 何度見まわしてもない。黒田さんにもらった500ユーロも、帰りの航空券もモンサンミッシェルまでの行き方を書いた手紙も、ガイドブックも、スマホも、財布もない。

 ちょっと待って。メモもスマホもなくて、どうやって先生に連絡すればいいの? その上、クレジットカードが入っていた財布までないなんて……。

 言葉のわからない国でいきなり野宿? いや、それ所じゃない。航空券もないから日本に帰れない。

 涙が溢れてくる。目の前のフランシスさんが歪んだ。

「ドウシマシタ?」
「ナッシング、ナッシング、オール、ナッシング(全部なくなったの)」
 なんて無力なんだろう。私は今、子どもみたいに泣く事しかできない。言葉もわからない、お金もない、知り合いもいない所で、この先どうしたらいいの。
  
 日本に帰りたい。
 望月先生、助けて。
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