先生と私の三ヶ月
 ホテルは石造りのこじんまりとした建物だった。中に入るとフロントのカウンターがあり、黒いスーツ姿の金髪の女性が出迎えてくれた。

「キャンユー・スピーク・ジャパニーズ?」
 一応日本語が大丈夫か聞いてみる。

「はい。日本語でいいですよ」
 女性が笑顔を浮かべた。
 恵理さんと話して以来の日本語に、ほっとする。

「ここに望月かおるという人が泊まっていると思うんですけど、私、その方に届け物があって来ました」

「少々お待ち下さい。今、調べます」
 女性がカウンターの上のパソコンを操作する。カタカタとキーボードを打つ音がした。

「はい。望月様は一昨日から泊まっています」
「良かった」
 やっと先生の所にたどり着けた。
 日本を出た事が遠い昔みたい。
 たどり着くまでにいろんな事があったからかな。

 いきなりパリ行きの航空券を渡されるし、部屋着同然の恰好でパリに来ちゃうし、空港で倒れるし、荷物は無くすし……。
 本当、踏んだり蹴ったりだった。先生に話したら、どんくさい奴だなって笑われそう。

 早く先生に会いたいな。

「あの、望月先生は部屋にいますか?」
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