先生と私の三ヶ月
 何が食べたいかと、先生に聞かれて名物のオムレツが食べたいと答えた。先生はよしと言って、私の手を引き、赤いサンシェードが可愛い、レストランに連れて行ってくれたけど、有名店だけあって混んでいる。待ってもいいかと先生に聞かれて頷いた。

 先生こそ、待つ事になっていいんですかと聞いたら、別に構わないと笑みを浮かべた。
 なんか調子が崩れるというか、先生はこういうの絶対に並ばないと思っていたのに、嫌な顔一つせず行列に大人しく並んでいる。

 それに、手もつないだままで……。

 あの、先生、いつまで手をつないでいるんですか? 私が転んだりして危なっかしいから手をつないでくれたんだと思いますが、並んでいる間もつなぐ必要ってありますか?

 という事を口にすればいい訳だけど、こうやって先生と手をつないだのが初めてだから緊張して言えない。骨ばった指の感触に先生は男の人なんだなと意識したら、さらに何も言えなくなった。

 なんか私、変だ。
 先生と会った瞬間からずっとドキドキしている。
 顔が熱い。

 空いている方の手で顔を仰いでいると、先生が「暑いのか?」と聞いて来た。「はい、暑いです」「まさか熱を出したんじゃないだろうな?」先生が心配そうに顔を寄せ……まさかの、おでこコツン。

 え――! おでことおでこをくっつけて体温調べるって、もしかして、私、流星君と同じ扱いをされているの?

「うん。平熱だな」
 かがんだ先生がニッと笑った。
 顔が近いよ。先生。

「先生、子どもじゃないんですから、おでこコツンで測るのはやめて下さい。ひ、人が見ていますよ」
 元の位置に戻った先生に抗議した。

「熱ってこうやって測るものじゃないのか? 俺は黒田にもこうするぞ」
「えっ、黒田さんにも!」
 目を丸くすると、先生が可笑しそうに笑う。
 先生のやや低めの笑い声が耳に心地いい。先生の声、好きだな。
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