コンクリートに蝉の抜け殻



「はい合流ー」



わらって迎えてくれた保科に安心して、夏の本気みたいな日差しに目を伏せて、そうして外に出る。保科はなれた手つきで袖のボタンを外した。並んで歩き出すと、さらに夏の本気を浴びた。



「今日さ、自習室行く前に職員室行ってたんだ。進路指導してもらってて。職員室も寒かったから長袖にしてたんだよなあ」

「あ、だからいま外してるんだね」

「そういうこと。……あっ」

「うん?」

「いま、普通に外しちゃった」

「……」



なれた手つきで外しているなとは思った。けれど、それが、どうしてそんなに濁点のついたような気づきに繋がったのか。それがわからず返答も思いつかない。黙っていると、保科が焦ったように続けた。



「前に、ボタンがかたくて無理だって永倉にやらせたの、口実だったってばれたな」

「え、あ、そういうことだったんだ」

「……あれ。気づいてなかった感じ?」

「うん、全然」

「あー……言わなきゃよかったわ。恥ずい」



保科は誤魔化すようにぐるぐると袖をまくっていった。なれてる、と思う。器用なんだろうなあ、とも。


……口実って、なんの? なんでわたしに任せようと思ったんだろう。



「さっき思っただけじゃなくてさ、前から、永倉と話したいこといっぱいあったんだ」

「たとえば?」

「バイト辞めたこともそうだし、あと」



たぶん、このあとに話されるのはこれだろうなという予想がついていた。話されることが怖かった。わたしに向けて放たれる、その言葉がとてつもなく怖かった。


対面ってこんなに怖いことだったっけ。噂話と、通りがかりに聞いた話と、そればかりに翻弄される高校生を過ごしたせいだ。


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