コンクリートに蝉の抜け殻
「わたしが帰ったからだし──わたしのほうが、ごめんね」
「永倉はわるくないでしょ。いきなり話したことのない大群が来たらびびるのはそりゃそうだし」
「でも」
その前から、わたしは全然話してなくて。保科ばかりに話してもらっていて。そうやって、困らせていたと思う。だから、保科の友達が来たとき、少しほっとしてもいて。
わたしがわるい、と再度言おうとしたところで、保科がまた切り出した。ああほら。また同じことを繰り返している。
「その前から、俺ばっか話しててうるさかったよなあーって反省してたんだ」
「ううん、わたしは逆に、保科にたくさん話してもらっててわるいなって思ってた」
「そうなの?」
「うん。上手く、話せなくて。その、言い訳なんだけど、緊張してたんだ」
「……永倉、緊張すると黙っちゃうタイプなんだ」
「保科はちがうの?」
「俺は緊張すると口がよくまわるタイプ」
反対だね、と返すと、保科は少しわらった。それを見て、困るとわらうタイプだったらどうしようと不安になる。いちど不安要素、謝りたいことができると、止まないもので。
「でもやっぱり、わたし、せっかく保科が話してくれてたのにそれに対しての返答も全然できてなかったし、」
「永倉はわるくないよ。俺は俺がわるいと思ってるからさ。ごめんなさい。それで、1回この話終わりな」
「あ、……うん」
保科がわるいなんて思っていないから、謝罪に対して何を返していいのかわからず。狼狽えたまま、昇降口で分岐。ロッカーを挟んだ向こう側に保科がいて、わたしはのろのろと外履きを取り出した。クラスがちがうから、ロッカーの場所もちがうんだ。