コンクリートに蝉の抜け殻
「わたしは、わたしがわるいと思うよ」
「……譲らないね」
「保科も同じでしょ。──だってね、わたし、さっきから黙ってばっかりで、保科にたくさん話してもらってて。でも内心では、保科が話してくれるたびににやけちゃってるもん」
「え、……え! まじ?」
「まじ、です」
大袈裟なほどのリアクション、大きめな声。蝉のなき声が止んだ気がして、すぐに気のせいだったと気がつく。自分の心臓が、あまりにもうるさいせいだった。
「俺、永倉が好きです。めっちゃ連絡すると思うし、受験生の夏休みなのに一緒に勉強しようって口実つけていっぱい会おうとすると思うんだけど、だけど、だから、その、付き合ってほしい、です」
はっとして大きく息を吸い込んでしまった。緊張、する。まず最初に頷いて承諾して、けれど、これは絶対に、言葉にして返したいと思った。
「わたしも、保科が好き。です。だから、その……、付き合ってください」
「っ、永倉、それ、ほんとにほんと? 俺粘着質纏ってるタイプのコンクリートとか木とかかもしれんよ、いいの?」
「いい、わたしも脚に強力な粘着テープまいてると思う」
「絶対しつこくメッセージ送っちゃうと思って連絡先交換、自制してたんだよ。自制といたらどのくらいしつこくなるかわかんない」
「それは、……むしろほしい、くらいだし」
保科は変な声を出した。そうして立ち止まるから、わたしもつられて立ち止まる。歩いていたときよりもはっきりと顔を上げると、ばっちり目が合って。
「俺、受かったら都内に通うし、引っ越すと思うよ。ほんとのほんとのほんとにいい?」
「いいよ。もちろん」
保科もじつは、自信がないタイプなのかもしれない。そういうところも似てるなあと思って、なんだか少し、安心してしまった。