コンクリートに蝉の抜け殻
「それってさ」
「うん」
「これ以上ないくらい、俺に安心してくれてるってこと?」
「……うん」
「はは、よかった。これでちがうって言われたら、自意識過剰すぎて恥ずかしくて溶けてた」
本来は感情で言い表せないはずなのに、どうしようもない安心感を抱く。それってたぶん、最上級だと思って。
いままで食わず嫌いしていたものに挑戦してみたら、その調理含めてすごくすごく美味しかったとして。そうしたら、いまのその食材のいちばん美味しいレシピは、たったいま食べた調理法によるものだ。と。思って。
思ったけれど、こんなにはっきりと伝わるだなんて。
でもとりあえず、失敗してはなかったみたいだ。
「ボタン、ありがとな」
「うん。……今日、バイト?」
「おー。来る用事あるん?」
「えっと、野菜。見たくて」
「うち安いもんな」
保科はなるほど、と言って、それからわらった。とびきりの笑顔だった。
「一緒に行く?」
「えっ、いいの?」
「直行するつもりで来たから」
「行く」
我ながらびっくりするスピードで返答して、歩き出した。だから、雨ではなかったらしい。傘の距離はなかったから。もっとも、保科は、小雨くらいだったら傘を持っていてもささないし。
わたしもそれに倣った可能性はある。