コンクリートに蝉の抜け殻
さっさと自販機まで歩いていく保科についていけば、すぐにピ、と、機械音がした。それからいつもわたしの飲んでいる紅茶が渡される。
「どうぞ」
「あ、お金……」
「いいよ。一緒に帰ってもらうための口実だからね、俺から差し出さないと」
いつもわたしの飲んでいる、無糖の紅茶。あまいものがあまり得意でないことも覚えてくれていたんだろう。だからこそ、きっと、強炭酸のサイダーが飲めないことを指摘された。
サイダーもあまいから。
「んじゃ帰りますか」
「うん、行こっか」
それから他愛ない話をして帰った。話している最中はどうしようもなく楽しかったのだけれど、結果としては連絡先を交換するに至らない話だったし、最終的には保科の友達集団と会って、気まずくなって、逃げ帰ってしまった。
逃げなきゃよかったのに。逃げてよかった。思考が混在する。ぐるぐると混ざって、ぐちゃぐちゃになりそうで、リサイクルに出されるペットボトルが羨ましいと思った。
逃げなきゃよかったと思うよ。だって、保科と話せる機会は少ないんだから。
逃げてよかったと思うよ。だって。
わたし、上手く話せなかったから。保科がずっと、気をつかうみたいに話し続けていたことに。
気がつけないほど焦っていたわけでもなかったのに。
客観的に、保科が困っているんじゃないかと感じ取れた。そのくせ何もしなかった。できなかった、なんて、言い訳だ。
だから。