破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「でっ……でも、でも……ラウィーニアの護衛も、すぐ傍に居るはずよね?」

 なんと言っても、彼女は未来の王太子妃だ。それに、そんな状況でコンスタンス様がラウィーニアを無防備に外出させるなんて、考え難かった。

 ラウィーニアは、顔を顰めて声を絞るようにして私に言った。

「それよ。きっと、その護衛が……裏切っていたんだわ。情報が漏れるはずよ。あの時にも」

「でも……ジェルマン大臣が……もう失脚してしまった後で、こんな事をしたとしても……何にもならないのに」

 私は事情を知り、困惑することしきりだった。

 もし、自分がジェルマン大臣だとして、ここでラウィーニアを攫おうとする理由がわからない。王太子の婚約者……いわば、後の王族へと名を連ねることは決まっている女性を狙ったことが暴かれればこの国の法律上間違いなく極刑は免れない。

 彼が国外逃亡を企てているのなら、一刻も早く距離を稼いだ方が良い。何の関係もない私だって簡単にわかることだった。

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