破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「私は個人的にはあまり物を考えない好戦的なクレメントより、周囲を見る余裕のある知的なランスロットの方が良いと思う。それに、彼は性格も真面目だからディアーヌと合ってると思うわ。クレメントと一緒に居た時に気を使っていたのは、いつもディアーヌの方だったでしょう? 片方だけが疲れる関係なんて、どうせ無理しても続かないわよ」

「そんな……」

「お嬢様。お手紙でございます」

 理路整然としたラウィーニアの言葉を聞いて、口を開こうとしたら、執事のチャールズが部屋へと入り控えめに声を掛けて来た。白髪できっちりとした執事服を着ている彼は、当主であるお父様のお気に入りの優秀な執事だ。ハクスリー家に仕えて、長い。

 そして、いつも通りならば彼はこんな無作法なことはしない。

 私がこうして誰かとお茶をしているのなら、その間に届いた手紙は部屋に帰ってから渡してくるはずなのにと不思議になって首を傾げた。そして、恭しく彼の差し出している銀色のトレイの上にある白い手紙を、そっと手にした。

「ディアーヌ。裏を返して見てみなさいよ。きっと……彼じゃない?」

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