破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 ゆっくり一歩一歩近付いて行く私に、グウィネスは悲しそうに言った。

 彼女が悪人ではないことは、私にだって理解している。風呂や服を貸して貰ったし、とても親切にもして貰った。自分の恋人を奪おうとされていなければ、良い友人になれていたかも。

「いいえ。恋愛に、ルールは無用だもの。だから、私も貴女と同じ事をしようと思うの」

「……同じことを?」

 グウィネスは、私の言葉に呆気を取られて驚いている。

 私は、それを見てにっこり微笑んだ。傍目から見れば虫も殺さぬような貴族令嬢だからって、そう見せてかけているだけで何も出来ない無能ではない。

 着飾るだけが仕事のような私たちにだって同じような立場の令嬢たちと嫌味の応酬をする事だってあるし、誰かが聞けば耳を塞ぎたくなるようなみっともない口喧嘩だってすることもある。

 人が集まれば、争いは付き物。

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