破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「コンスタンス様、私とグラディス侯爵家のランスロットは婚約を交わしました。そして、その事実は、明日発行の国営新聞にも大々的に掲載されるはずです。それは公的に動かし難い事実になり、両家の名誉のためにも解消は出来ない。ですから、命の恩人に対する報酬は、申し訳ないんですけれど。別のものにして頂けないかと……」

 私がしおらしい様子でそう言うと部屋に居た面々は、私以外は全員びっくりした表情になった。

 確かに貴族同士の婚約には、ある程度の期間を要し、貴族院に書類を提出してからそれが処理されるまでに時間がかかる。お役所仕事の悪いところだけど、彼らだってそれだけを担当している訳ではないから仕方ない事なのかも。

 けれど、私にはある奥の手があった。

「ディアーヌ嬢。それは済まない事をした。だが、その情報については、僕も初耳だったな。ついこの前まで、君とランスロットは婚約しておらずただの恋愛関係にあったようだが?」

 コンスタンス様は驚きつつも、少し面白そうな顔をしている。何も出来ない伯爵令嬢だと思っていた子が、自分の予想もつかない事をしたんだから当たり前なのかもしれない。

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