破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 彼女は権力者となる王族に嫁ぐために幼い頃から人に対し公平公正に見られるように教育されているはずで、それは当たり前のように身について居るはずだ。

 けれど、近い身内の事となると権力を持たせてはいけない人になりそう。年下で幼い頃から何でも出来る彼女に甘やかされている自覚のある私は、大きく溜め息をついた。

「それだけではないの。それを見るたび着るたびにクレメントの顔を思い出すなんて、絶対嫌だもの。でも、あの人は拘りが強くて仕立てに出す店や生地の質にも口を出していたから。そうね……サイズ直しをすれば、長く着られるとは思うけど……似合いそうな誰かに、譲っても良いし」

「恋人への贈り物をおろそかにする程に、彼がお金に困っていたら、確かに大問題だわ。炎の騎士クレメント・ボールドウィンは、レジュラス国王宮騎士団の要職筆頭騎士五人の内の一人よ。我が国レジュラスは、国防の要たる大事な人たちにも俸給が払えないくらい困窮に喘いでいることになる」

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