破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「うん。可愛い。あの野暮ったいセンスの叔父様の用意したドレスにしては、すごく良いわ。一年前って……何を言ってるの。十七歳が十八歳になっただけのことでしょう。ほんの少しの誤差だわ。子どもっぽいも、何もないわよ。このドレスだと、裾が下が広がるから髪型は上げた方が良いわよね……」

 まだ当の本人が夜会に行くって言ってもないのに、髪型まで吟味し始めたラウィーニアは、私付きの髪結いメイドと相談し始めた。準備に手を抜かない彼女は髪飾りまで決めてしまうつもりらしい。

 それを横目に見ながら、私はさっき届いたばかりの手紙を見直していた。とっても素っ気なく、こういう時にお決まりの何かを期待させるような愛の言葉も何もない。

 氷の騎士と呼ばれている、とても彼らしいもの。

 ランスロットは、何を考えているんだろう。私がクレメントと付き合っていた事は、彼は絶対に知っているはず。一緒に出席した夜会でも、彼を見掛けたことある。いつも彼一人か、誰かと話していても男性と一緒だったみたいけれど……。

「よし。これで準備は良いわね。後は、彼に今週末の夜会に出るって、返事を書いておきなさいよ。ディアーヌ」

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