【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
6.伯爵令嬢、魔導具を解析する
 ラーシュとは一体何者なのか。
 あの後、彼はカリーネが提案した、各工場(こうば)で使途先が見つからない不動在庫となっている部品を集めて、それを必要な工場へ売る、ということを始めた。それを扱ってくれる商会も見つけてきたらしい。むしろ、この国で最も大きな商会であるトッテリ商会がそれを引き受けてくれた、と。
 トッテリ商会であれば信用できる、と、各商会も不動在庫となっている部品をトッテリ商会に売り、必要な部品をそこから買う、という流れ。だた、トッテリ商会で扱う部品は、各工場で長らく保存されていたもの、ということもあり品質面においては使う人が判断する、ということになっている。それでもトッテリ商会は買い付けるときに、そのものがきちんと本物であるかの確認を行っている。それができるのもトッテリ商会だから。今のところ、偽物の流通は無いようだ。
 また、例の代理店であるアルギナだが、どうやらそこから偽物の部品を買わされたという被害は、他の工場にも及んでいた。ラーシュがその部品が偽物であったことを確認し、回収し、アルギナ代理店へと乗り込んだところ。その部屋はもぬけの殻となっていた。
 逃げられた。そのときのラーシュの悔しそうな顔を、カリーネはなぜか忘れることができなかった。

 そして今、カリーネはあのボルネマン商会が回収した魔導音声放送機の修理に携わっていた。やはり、修理の対象となる数が多いようで、ボルネマンは個人でやっている工房にも修理の手伝いを依頼した。もちろん、そこに金銭のやり取りは発生する。工房としては、仕事がもらえるわけだから、特別忙しい工房以外、皆、快く引き受けてくれた。修理する理由、不具合の現象、修理の方法を書いた指示書によって、どこの工房も同じように修理することができるという手筈になっている。

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