【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「君のお師匠さんは怒ると怖いからな、先に行ってるぞ」
 ラーシュは立ち上がり、カリーネの頭をクシャリと撫でてから部屋を出ていった。一人残されたカリーネは、口の中が咽ていたのでゆっくりとお茶を飲む。
 ラーシュがわからない。そもそも、元々がわからない男であったが。謎は多いし、フランの友人ということしかわからない。いや、フランの友人であればフランに聞けばいいのか。聞くって何を。
 と考えたところで、一気に残りのお茶を飲み込んだ。気になったラーシュへの思いも飲み込むように。
 先ほど広げたメモ帳や資料をかき集めて、それを抱きかかえるようにして工房へと向かった。

 工房ではラーシュとハイケが頭を寄せ合って何かを見ている。何かとは、もちろんあのラベルゴ商会の魔導具なのだが、それでもそんな二人の後姿を見ているだけで、胸がズキンと痛む。なぜ痛むのか。カリーネには理由がわからない。

「あ、カリーネ。来たのね。今、あのびっちり密集している基板をラーシュに見てもらったところ」

「この基板は酷いな。先ほど回路図を見せてもらったからわかるが、保護回路が無いからここで基板が焦げている。恐らく、過剰な魔力がここに流れたのだろうな」

「あと、ですね。ここの動力部と制御部の距離も近いような気がするのです。もしかすると、この過剰に魔力が流れたのも、制御部が動力部に引っ張られて、誤動作したものと考えられるのですが、どうですかね?」

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