【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
 上、というのは恐らく最上階のことだろう。この受付のフロアは最上階まで吹き抜けになっていて、それに通じる螺旋階段がある。カリーネがちらっと受付の女性に視線を向けると、彼女たちは揃って頭を下げる。カリーネも慌てて頭を下げた。
 ラーシュを先頭に螺旋階段をゆっくりと上がる。この階段手摺の装飾も凝ったものだ。

「ボルネマン商会って、儲かってるんですね」
 カリーネはつい本音を漏らしてしまう。
「そうだな。このストレーム国では昔から魔導具を扱っている商会だからな。老舗というやつだ」
 ぐるぐると目が回りそうになるくらいに、螺旋階段を上りきったところを左側へと進んでいく。ラーシュは場所がわかっているのだろう。外の光が差し込まない少し薄暗い廊下の一番奥。
 白い扉をラーシュが手の甲で叩く。中から壮年の男性の声が聞こえたため、ゆっくりとドアノブを下げた。

「やぁ、ラーシュ。久しぶりだな」

「会長も、お元気そうで」

「で、なんだ。ハイケじゃないか」

「久しぶりね、会長さん」

「相変わらず、嫌味な言い方だな。で、そっちの子供は?」
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