寡黙なトキくんの甘い溺愛

大橋くんと外野までに行く道すがら――私に大橋くんは囁いた。



「ねぇ俺、本気だから」

「え、どういう、」

「砂那ちゃんを本気で好きって言ってんの。この俺を惚れさせたんだから、これから覚悟しといてよね」



「大橋~」と外野の男子に呼ばれて、大橋くんは駆け足で私から離れる。その時の後ろ姿が、どこかぎこちなくて……耳を見ると、赤く染まっていた。その赤は、きっとドッチをして体を動かしたから火照った熱……ではない。

もっと、別の熱――



「……うそぉ」



その熱は、今度は容赦なく私を襲い、そして呑み込む。

ドキドキが苦しくて、思わずその場に座り込んで顔を埋めた。

そんな私の耳に届いたのは、



「トキくん、アウト!ゲームセット!B組の勝利ー!」



という、C組の敗退を知らせる、審判の声だけだった。

< 149 / 335 >

この作品をシェア

pagetop