婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
リロイから差し出された手は……明らかに此方を向いている。
ルビーは隣に居るし、後ろを振り向けど誰もいない。

「わたし?」の意味を込めて指を自分の方に向けると、リロイは悪戯な笑みを浮かべたまま頷いているではないか。
その背後には口元を押さえているルビーと、これでもかと目を見開いているキャロラインの姿があった。

(ど、どういう事……!?)

動揺しつつも平然を装いながらリロイに問いかける。


「私に言ってます………?」

「うん、そうだね」

「初対面ですよ?」

「うん、そうだね」

「そ、それに婚約も解消したばかりで」

「うん、そうだね」


お分かりい頂けただろうか?
リロイの笑顔の圧力と底意地の悪さを……。
これ以上の言い訳は全て「うん、そうだね」で掻き消されてしまう事だろう。
ここはストレートに問いかけた方がいいかもしれないと態度を切り替える。


「…………何故ですか?」

「あはは……っ!面白い反応だなぁ」


このヒラリヒラリと躱される感じに、イラッとしてきたのは自分だけではないだろう。
リロイのペースに巻き込まれていくと良くないと勘がいっている。
それに先程までにツンとしていたのにも関わらず、リロイと関わった途端に敵意を剥き出しにする恐ろしいキャロラインを見て確信する。

(ここは……断るが吉)
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