婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
元の場所に戻ると、何故かモイセスとルビーの姿はなかった。
近くに居た侍女に話を聞くと、カップを割って手を切ってしまったルビーを抱えて包帯を取りに向かい、手当てをしているそうだ。
そういえば、モイセスは誰かが怪我をする事を過剰に嫌うような気がした。

そして困惑した侍女達の視線の先……今にも泣き出しそうなキャロラインが肩を震わせている。
『こんな事を言うつもりはなかった』『本当は違うのに……』
そんな歯痒い思いが此方にまで伝わってくるような気がした。
確かに今のキャロラインの言い方では相手に対しての配慮もなく、歯に衣着せぬ物言いと上からの発言は反感を買いやすいものだろう。
ふと、人前でキャロラインが変わる理由が気になったのと、不器用な彼女が本当はどうしたいのか……確かめる為に声を掛けた。


「……キャロライン王女殿下」

「…………ッ」

「一緒に行かないのですか?」

「何よっ!子爵令嬢のくせに、こんな事でわたくしに勝ったつもりになっているなら勘違いしない事ね!」

「…………」

「別にわたくしはッ、わたくしはドレスを買ってもらわなくても沢山持ってるし、それにリロイに選んで貰わなくたって……っ!」

「…………」

「~~~っ!貴女こそ少しリロイに気に入られたからって、調子に乗らないでよね!!お兄様だって、モイセスだって……!どうしてこんな顔が良いだけの貧乏臭い令嬢の所に通って馬鹿みたいッ!!有り得ないわ」
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