婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
いつものオロオロして照れながら話す彼の姿が嘘の様だ。
別人のようなベルジェを見て驚いていた。
いつもならニコリと笑える筈なのに、今日は上手く笑えなかった。

(……なんだか知らない人みたい)

完璧王子と言われる理由が改めて分かったところで、タイミングを伺っていた。
ベルジェが眉を寄せて此方を見つめていた事にも気づかずに……。
アイカはというと、慌ただしく会場を出たり入ったりを繰り返している。

(…………やっぱりリロイ様の言う通り、あの男が来てるのね)

遅れてきた事もあり、アチラも計画通りには行かなかったのだろう。
相当焦れているようだ。
ベルジェのパートナーとして堂々と振る舞う事で、更にアイカを焦らしていく。
アイカの目が徐々に血走っていき、表情が抜け落ちていく。
しかし他の令嬢達も同じような状態な為、特に彼女の行動が目立つことはない。


「ジュリエット嬢、すまないが少々挨拶に向かわなければならない。ここで待っていてくれ」

「はい、いってらっしゃいませ」

「……あとでゆっくり話がしたいんだが、いいだろうか?」

「…………。はい」

「ありがとう……すまない」


ベルジェはそう言って手の甲に口付けてから去っていった。
彼の優雅な動きと堂々とした態度が、少し寂しく感じた。
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