婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
本当は「大丈夫か?」と、声を掛けたかった。
しかし今、ジュリエットの元に行ってしまえば彼女を困らせて逆に迷惑を掛ける事が分かっていたから一歩踏み出せなかった。

(……この気持ちは、なんだろう)

こんなにも感情が振り回される事など今までなかった。
心が熱くなったり、そわそわしたり、特定の人が気になったり……不思議な感覚に戸惑っていた。

そんな時、キャロラインから言われた言葉が頭を過ぎる。


「お兄様の氷のような心を動かせる令嬢なんているのかしら……?」

「氷って……言い過ぎじゃないか?」

「だってお兄様は、誰にも興味ないでしょう?」

「はは、そんな事ないよ」

「どうかしら……?」


その時、痛いところを突かれたと思った。
確かに誰かに特段、興味を持ったことなどなかった。
容姿が美しくても所作が綺麗でも家柄が良くても……良い意味でも悪い意味でも"同じ"だった。

きっと自分が愛情を持っていなくとも、結婚は出来るし何も問題なく夫婦になれる。
そう思った瞬間……怖いくらいに自分が詰まらない存在に思えた。
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