婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
「…………ですが」
珍しく言葉が出なかった。
それよりも今更どう対応したらいいのか分からないのだ。
「ベルジェ……自分の気持ちを確かめて来い」
「……っ」
「逃げたら後悔するぞ……?」
「!!」
「ハッハッハッー!なんてな」
そう言われて思い浮かんだのは忘れ掛けていたあの痛みだった。
胸元を無意識にぎゅっと握った。
きっと父の言っている意味とは違うだろうが、その言葉は胸に刺さるものがあった。
しかし、もう手の届かない場所に居るジュリエットを見て、果たして何を確かめればいいのか……。
モイセスと共にカイネラ邸に向かう為に支度をして馬車を待っていると、まるでタイミングを見計らったかのように驚くべきことが起こる。
少し離れた場所で侍女達が掃除をしていたのだが、聞き覚えのある名前に肩を揺らした。
「ねぇ、聞いた?ジークサイドの宝石って呼ばれているルビー様の妹の……なんだったかしら」
「ジュ……ジュリ、ジュリエンヌ様?」
「そうそう!そのジュリエンヌ様の婚約者のマルクルス様がね、ルビー様を目当てに婚約したんじゃないかって噂があるのよ!」
「ーーー!?」