婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
それに、いつまでもマルクルスの事を引きずり続けても幸せは見えてこない。
簡単に割り切れない事も勿論あるだろうが、前に進まなければ新しい未来は開けない。

しかしモイセスは納得出来ないのか、難しい顔をしている。
いつもは何を言っても大抵、受け流しているモイセスが珍しく言葉を返した。


「私はどうしても自分が許せない……こんな自分は幸せになる資格なんてないと、そう思っている」

「……!」

「失ったものは二度と戻らない……っ」


そう言ってモイセスは力いっぱい拳を握った。
詳しい事情は分からないが、何かを失いとても後悔している事だけは理解出来た。
あまりにもその表情が苦しそうで、無意識にポツリと呟いた。


「自分を責め続けて罰する事が、償いになるのですか?」

「……………え?」

「確かに失ってしまったものは戻りません。でも……そこで立ち止まってしまったら何も変わらない。だから私は何があっても進み続けたいと、そう思っています」


モイセスはその言葉に、とても驚いているようだった。
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