婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
モイセスは嬉しそうに微笑みながらカップを静かに持ち上げた。
その表情は少しだけ明るくなったような気がした。
彼に遠慮する事なくパクパクとクッキーを食べていた。
ルビーとベルジェが話している間はこうしてモイセスとお茶を飲みながら時間を潰す事が恒例になっていた。

大人で落ち着いた雰囲気であるモイセスと一緒に居るのは心地よい。
冗談を軽く受け流して上手く切り返してくる回転の早さや、距離感の取り方がとても上手いように感じた。

何よりも縁側でお茶を啜る老夫婦のような平和な気分と安心感はモイセスだからこそ成り立つのだろう。


「はぁ……美味しかった!ご馳走様でした」

「…………よく食べるな」

「当然です!ルビーお姉様達、そろそろお話が終わる頃かしら」

「そうだな」


モイセスとそろそろ迎えに行くかと立ち上がった時だった。


「モイセス様、頭に葉が…………きゃっ!?」
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