初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜
「まったくアンタはどこまでもダメな子だね」
これ見よがしに大きなため息を吐きながら、わたしをまるで汚いものかのような眼で見てくる。
「ごめん…なさい…」
「もうその言葉は聞き飽きたよ。まったく義姉さんは一体どんな育て方したんだか」
「マッ…、お母さんは何も悪くないですっ」
「フンッ、口答えだけは達者だこと。夕飯は自分で作りなさいよ。じゃあね」
「…」
バタンッ!と、大袈裟なほどの大きな音を立てて叔母は帰って行った。
シ…ン…ッ。
自分以外、人の気配がない自宅。
パパはわたしが5歳の時に虹の橋を渡って行ってしまった。
ママはわたしの為にバリバリ働いていて、今はパリに出張中だ。
わたしはひとりっ子だし、頼れる親戚はパパの親戚だけだからパパの妹の紗枝(さえ)おばちゃんが毎日この時間に食糧と生活用品を持って家に来る。
ママは紗枝おばちゃんに家事全般をやって欲しいとお願いしたようだし、おばちゃんもママの前ではニコニコ顔で承諾していたのに、実際は全部わたし任せだ。