龍神様の贄乙女
「凪……」
血を分けた真の娘の名をつぶやいて周囲を見回すと、川は昨日とは一変。恐ろしいほど穏やかに陽光をキラキラと跳ね返していた。
だが、川を取り囲む木々が大量になぎ倒されて、まるで巨大な蛇がここを通ったみたいな有様になっていて。
(これはやはり――)
あれは夢などではなく、麓の里は産まれたばかりの龍神の〝仮初の逆鱗〟に触れて、綺麗さっぱり押し流されてしまったと考えた方がいいだろう。
辰は腕の中の山女をそっと長持にもたれ掛からせると、祠の格子戸に手を掛けた。
そうしていつもの調子で開けてみたけれど、扉の先は見慣れた屋敷などではなく、傀儡同然のミントグリーン の拳大の宝玉があるだけだった。
異世界に繋がれない事にハッとして、肩から着物を落として自身の背中へ触れてみた辰だったけれど――。
「辰……様……?」
そこで目を覚ましたらしい山女に声を掛けられた。
山女は辰がすぐ傍にいる事に心底驚いた顔をして、
「え? あれ……? 私……、確か手足を縛られて……川へ……」
そこまで言って、ハッとした様に辰を見詰めてから、「もしかして辰様が……助けて下さったのですか?」と瞳を潤ませる。
血を分けた真の娘の名をつぶやいて周囲を見回すと、川は昨日とは一変。恐ろしいほど穏やかに陽光をキラキラと跳ね返していた。
だが、川を取り囲む木々が大量になぎ倒されて、まるで巨大な蛇がここを通ったみたいな有様になっていて。
(これはやはり――)
あれは夢などではなく、麓の里は産まれたばかりの龍神の〝仮初の逆鱗〟に触れて、綺麗さっぱり押し流されてしまったと考えた方がいいだろう。
辰は腕の中の山女をそっと長持にもたれ掛からせると、祠の格子戸に手を掛けた。
そうしていつもの調子で開けてみたけれど、扉の先は見慣れた屋敷などではなく、傀儡同然のミントグリーン の拳大の宝玉があるだけだった。
異世界に繋がれない事にハッとして、肩から着物を落として自身の背中へ触れてみた辰だったけれど――。
「辰……様……?」
そこで目を覚ましたらしい山女に声を掛けられた。
山女は辰がすぐ傍にいる事に心底驚いた顔をして、
「え? あれ……? 私……、確か手足を縛られて……川へ……」
そこまで言って、ハッとした様に辰を見詰めてから、「もしかして辰様が……助けて下さったのですか?」と瞳を潤ませる。