【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 突然間近で対面する事になって私は固まってしまった。

「おっと、失礼」

 真っ白では無いけれど、白いものの方が多い髪は前髪から後ろに撫でつけられている。
 眼鏡の奥の目は優しげで、鼻の下に髪と同じ色合いの口髭がある。

 スーツ姿が自然に似合っていて、初対面でも好感が持てる様な人だった。


 ドアを開けたら突然私がいて、相手も驚いたんだろう。
 でもすぐに柔らかく微笑みかけてくれた。

「貴女が聖良さんですね。失礼しました。私は菅野(かんの)寛文(ひろふみ)と申します。赤井家の運転手をしております」

 ドアを閉めて自己紹介をした菅野さんは丁寧にお辞儀をする。
 まさしく紳士だ。

 私も慌ててお辞儀を返す。

「あ、香月聖良です。ご丁寧にどうも」


 お辞儀をしながらふと思う。


 あれ?
 赤井家の運転手?
 赤井って、もしかしなくても零士や俊君の家の?

 って言うか、どうしてそんな人が家の中から出て来るの?


 最後の疑問は、菅野さんに掛けられた津島先輩の言葉で判明した。

「あ、菅野さん。母親への説明終わった?」
「はい、万事滞りなく」


 お母さんへの説明?
 って、ああ。
 急に今日引越しになった理由の説明かな?

 二人のやり取りでそう察した。
 多分間違ってはないだろう。


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