元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「その通りですリュシアン様。皆様のご迷惑になりますので食事中はお静かになさってください」

 リュシアン様の背後に控える、きっちりとした格好をした二十代半ばほどの青年がそう静かに窘めてくれる。
 しかしリュシアン様はなんとも嫌そうな顔をしてそちらを振り向きもせずに返した。

「煩いぞマルセル。まったく、なんでお前までついて来たんだ」
「王陛下のご命令ですので」

 慣れたふうにそう答えた彼にリュシアン様が小さく舌打ちをするのが聞こえた気がした。
 マルセルと呼ばれた彼は、クラス担任のジョン先生曰くリュシアン様の護衛らしく常に彼の側にいる。
 そしてリュシアン様は見聞を広めるためにこの学園にやってきたのだと説明があった。
 
(ユリウス先生は、このこと知ってるのかなぁ)

 花瓶を落とした人物もまだ判明していないのに、また新たな心配事が増えてしまった。

(でも相談しにも行けないし……)
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