元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「――で、何を企んでんだよ。まさかまたレティを連れていこうってんじゃないだろうな」
そう低く訊いたのは、アンナとは逆隣に座るラウルだ。
普段ラウルと同じテーブルでお昼を食べることなんて滅多にない。やはりラウルも彼を警戒しているのだろう。
それにしても王子様相手にこのぞんざいな言葉遣い。少しヒヤヒヤしてしまう。
しかしリュシアン様は特に気分を害した様子もなく答えた。
「連れていけたら一番良いのだけどね」
「……っ」
ぎくりとして、フォークを持つ手が止まってしまった。
「守りに来たのさ」
「守りに?」
何やら覚えのある会話だと思ったら、ラウルも思い出したようだ。
「この間もそんなこと言ってたけどよ、それって」
「姫、もうすぐ18歳の誕生日だろう?」
「えっ、あ、はい」
急にこちらに視線が戻ってきて驚きつつ頷く。
そうだ。色々あって忘れそうになっていたけれど、誕生日がもう来週に迫っている。