元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「――で、何を企んでんだよ。まさかまたレティを連れていこうってんじゃないだろうな」

 そう低く訊いたのは、アンナとは逆隣に座るラウルだ。
 普段ラウルと同じテーブルでお昼を食べることなんて滅多にない。やはりラウルも彼を警戒しているのだろう。
 それにしても王子様相手にこのぞんざいな言葉遣い。少しヒヤヒヤしてしまう。
 しかしリュシアン様は特に気分を害した様子もなく答えた。

「連れていけたら一番良いのだけどね」
「……っ」

 ぎくりとして、フォークを持つ手が止まってしまった。

「守りに来たのさ」
「守りに?」

 何やら覚えのある会話だと思ったら、ラウルも思い出したようだ。

「この間もそんなこと言ってたけどよ、それって」
「姫、もうすぐ18歳の誕生日だろう?」
「えっ、あ、はい」

 急にこちらに視線が戻ってきて驚きつつ頷く。
 そうだ。色々あって忘れそうになっていたけれど、誕生日がもう来週に迫っている。
< 144 / 260 >

この作品をシェア

pagetop