怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
いまだに湊人の言葉を理解しきれずに眉間に皺を寄せている拓海には申し訳ないけれど、沙綾は湊人が愛しくて堪らなくなり、思いっきり抱きしめた。
「きゃー!」
「湊人、大好きだよ。ありがとう」
「みなともするーっ! まま、だいすきよ」
「うん、ありがとう。湊人、パパにもする?」
「ぱぱにも?」
さりげなく拓海をパパと呼んでみる。湊人は沙綾の腰に抱きついたまま拓海に振り向いてから、こちらに視線を戻した。
「だって家族だから仲良しでしょう? ママとパパも仲良し、湊人とママも仲良し。じゃあ湊人とパパは?」
「なかよしー!」
そう叫びながら反対側の拓海に飛びついていく小さな背中を見て、沙綾は目頭がじわりと熱くなる。
昨夜は全くと言っていいほど眠れなかった。
湊人に話そうと決めたはいいものの、拒絶されてしまったらどうしよう。
沙綾の勘違いで父親を知らない状態で生を受け、急に誤解が解けたからこれからは家族です、だなんて、親のエゴでしかないのではないか。
そう思い始めたら不安と罪悪感で堪らなかった。
しかし、湊人は寛容にも拓海をパパだと受け入れたようで、飛びついたままぎゅっとしがみつき、久しぶりの触れ合いに嬉しそうにはしゃいでいる。