怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました

「ぱぱ、たって! たかいのして!」
「よし!」

拓海も『パパ』と呼ばれたことに驚きながらも相好を崩し、湊人を両手で高く持ち上げグルグルと回して遊び始めた。

その光景は夢にまで見た幸せな三人家族そのもので、沙綾の瞳から一筋の涙がぽろりと零れる。

それを湊人に見られぬようすぐに拭い去ると、拓海は片手で湊人を抱っこしたまま、反対の手で沙綾を抱き寄せた。

「ありがとう」

拓海のそのひと言に、どれだけの想いが込められているのだろう。

見上げれば拓海の瞳も心なしか赤く、潤んでいるように見えた。

沙綾は両手をいっぱいに広げて拓海と湊人を抱きしめ返すと、間に挟まれた湊人は「ちゅぶれりゅー!」とキャッキャと笑い声をあげる。

(あぁ、幸せ……。私の居場所は、間違いなくここなんだ)

沙綾は噛みしめるように目を閉じて、その極上の幸せにいつまでも浸っていた。



< 177 / 200 >

この作品をシェア

pagetop