怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
思いの丈をぶちまけるような勢いで語り始めた沙綾だが、ぽかんとする湊人と、笑いを堪えきれないといった表情の拓海の視線に気付き、一瞬固まった後、両手で顔を隠して蹲った。
「あぁ……またやってしまった……!」
「はははっ、楽しめたようでよかった。懐かしい沙綾が見られたな。本当に君は可愛らしい、湊人そっくりだ」
「……それ、あんまり褒めてませんよね?」
「なにを言ってるんだ。最高の賛辞だろ。それより、帰ってきて早々悪いが、すぐに出掛けるぞ」
真っ赤な顔で口を尖らせる沙綾をなだめるように頭をぽんと叩き、手早く湊人の出発準備を整え、三人で向かったのは区役所。
以前ドイツで書いたものはもう使えないので、新たな婚姻届にサインをしなおし、証人欄は拓海の父と夕妃に頼んだ。
父には今更どういうことだと驚かれたが、今度説明がてら妻と息子を連れていくと話すと、さらに驚いていた。
土曜日なので時間外窓口へ向かい、問題なく書類が受理される。
「やっと、これで君は名実ともに俺の妻だ」
ずっとこの日を待っていた。三年前から、ずっと。
仲の良かったという沙綾の両親と同じように、彼女の誕生日がふたりの結婚記念日となった。
「はい。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
瞳を潤ませる愛らしい妻を抱きしめようと腕を伸ばすと、湊人がふたりの間に割って入り、沙綾の足元に抱きついた。