怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
「まーま。きょうのふく、おひめさま!」
「本当? 似合うかな?」
「うん! かわいい!」
「ありがとう、湊人」
ドレス姿への褒め言葉を湊人に先越され、大人げなく心に不満が湧いた。
狭量な自分に苦笑を漏らしながら行き場をなくした腕をそっと湊人の背中に添え、「ママに言わないといけないこと、まだあるだろ?」と促した。
「そうだ! まま、おたんじょび、おめっとー!」
「おめでとう、沙綾」
「ふたりとも、ありがとう」
「あのね、みなとね、ままにね、あの、あのね、ばーぐつくったの! こねこねしてね、あとおやさい! おやさいあらうの。そしたらね、みずがびしゃーってなるの!」
必死にママに喜んでもらおうと話す息子のテンションの高さが先程の沙綾とかぶって見え、微笑ましさと愛しさで頬が緩む。
沙綾も同じように思ったのか、湊人の話を頷いて聞きながらも、耳まで赤くなっていた。
早く料理をお披露目したくて仕方ない湊人のために真っすぐに家へ帰り、早速ハンバーグを焼いてバースデーパーティーが始まった。
「私、こんなに幸せな誕生日ははじめてです!」
でこぼこのハートや耳がもげたクマの形のハンバーグを、沙綾は目を輝かせながら美味しいと頬張り、そのたびに湊人が誇らしげに胸を張る。