怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
濃紺のリングケースを開けて小さい方の指輪を取ると、沙綾の左手を握り薬指に通す。
真っすぐでシンプルだが、正面がほんの少しだけ波打つデザインになっていて、沙綾の方にはダイアモンドが六つ斜めに埋め込まれている。
沙綾の華奢な指によく似合うデザインに満足気に頷くと、沙綾が「私も、拓海さんにつけたい」と、大きい方の指輪を取ってつけた。
揃いの指輪をはめると、より夫婦になったのだと実感が増す。
嬉しそうにはにかんで指輪を見つめる沙綾を引き寄せて、腕の中に囲い込んだ。
「これで、ようやく俺のものになった」
「私はずっと拓海さんのものでしたよ」
真新しい指輪をはめた左手の甲に唇を寄せ、改めて誓いを立てる。必ず、この愛しい人を幸せにしてみせると。
腕を伸ばしてテーブルからブラウンの箱を手に取ると、蓋を開いて沙綾に差し出した。
「え? これは?」
「ドイツで沙綾の誕生日に渡そうと思って購入していたものだ。三年も前のデザインだし、つけなくてもいい。ただ、俺の決意を知っておいてほしかった」
絶句してソリティアの指輪と拓海を交互に見る沙綾だが、理解した途端眉尻を下げて申し訳なさそうな顔をする。