怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました

(ようやく渡せる時がきた。自業自得とはいえ、長かった……)

ローテーブルにふたつ並べて置いてあるリングケースを見る。

ベルベットの光沢が美しい濃紺のリングケースはひと回り大きく、先月沙綾と一緒に選んで購入したふたりの結婚指輪が入っている。

もうひとつ、ブラウンの革張りの小さな箱には、三年前にドイツで購入したエンゲージリングが収められ、日の目を見るのを今か今かと待っていた。

「拓海さん?」

寝室からリビングへきた沙綾に声をかけられ、ぼんやりしていた拓海は顔を上げる。

「なにか飲みますか?」
「せっかくだ。シャンパンでも飲むか」
「じゃあ、少しだけお付き合いします」

キッチンでシャンパンとつまみになるチョコレートを用意して、ふたり並んでソファに座り、カチンと小さくグラスを合わせ喉を潤す。

「湊人、今日凄く楽しかったって言ってました。お絵描きも料理も、パパとふたりははじめてだけど楽しかったって」
「そうか。何度も泣かれたけど、湊人が楽しかったならよかった」
「ありがとうございます。本当にすごく思い出に残る誕生日になりました。それに、来年からは誕生日だけじゃないんですよね」
「あぁ。これからは君のご両親と同じ、誕生日が俺たちの結婚記念日だ。そうだ、これを」
「あ、指輪。受け取ってきてくれたんですね」

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