怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
「婚姻届も、こんなに素敵な指輪も用意してくれてたのに、私……」
「違う。沙綾を責めたいわけでも、過去を後悔させたいわけでもないんだ」
彼女の両肩に手を添え、しっかりと目を見て伝えた。
「俺を夫と父親にしてくれてありがとう。今まで苦労させてしまったぶん、これからは必ず沙綾と湊人を幸せにする」
「拓海さん……」
「これは、その誓いの証に受け取って欲しい」
「嬉しいです。指輪ももちろんですけど、拓海さんの言葉が、本当に……」
じわりと涙ぐむ沙綾の目尻に指を置き、クスリと笑う。
「そんなに涙脆かったか?」
「自分でも驚いています。今日は感動しすぎて、ずっと泣いてる気がする……」
「今からもう少し“ないて”もらうことになるが」
「え……?」
拓海は沙綾の背中と膝裏に腕を入れると、そのまま抱き上げて寝室へ向かった。
「たっ拓海さん……?」
戸惑った妻の声を一切聞かず無言でベッドにたどり着くと、膝をつきながらそっと沙綾を下ろし、覆いかぶさる。
「言ったはずだ。次は容赦しないと」
そう宣言した日から、ずっと今日を待っていた。
すぐにでも抱いてしまいたい気持ちを堪え、湊人に父として受け入れられるよう努力し、沙綾の夫となった日に抱こうと心に決めていた。