年下彼氏の結婚指導
04.
「俺、仁科さんが教育係で良かったです」
 
 そう切実に訴える姿に思わず息が詰まった。
 いつもの……綺麗に取り繕われた表情が歪んでいる。
 色味を帯びて向けられる表情は、儀礼的でも対外的なものでもない。
(ちょ、こんなタイミングで……そんな顔……っ)
 自分だけがこんな彼の顔を見ているのではないか、なんて勘違いしてしまうじゃないか。
「そ、そう? ありがとう!」

 そんな頭を掠めた思いを急いで振り払い、華子はあ慌てて財布を出した。
「会計はもうお連れ様に済ませて頂いています」
 にこやかに告げるスタッフに華子は唖然と口を開く。
(いつの間に?)

「ちょっ……こう言う時は上司を立てるものよっ」
 いつか聞いた台詞を口にするも、思わず噛んでしまい、羞恥に顔に熱が上がる。思っているより動揺しているらしい……
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