年下彼氏の結婚指導
 結芽の顔が頭を掠める。
 考えないようにしていた、結芽とのランチデート──あれから二人はどうなったのか……

「そうですよ。……今日くらい一緒に行きたかったのに」
 ずんずん進む翔悟の勢いに引き摺られ、華子は必死に足を動かす。物思いに耽っていたのも合わさり、翔悟が何を言ってるか聞き取れない。
 ……それにしても、さっきから怒って見えるようなのは何故なんだろう。

「元彼にあんな風に笑ったりして、誤解されたらどうするんだ。お人好しだとは思っていたけど、ここまで危なっかしいとは思ってなかった。俺ばっかりアレコレ気にして……」
 ……なんかブツブツ言ってるし。

 手を離して、お金を払うから、という言葉は、すっかり上がった息に邪魔されて言葉にならない。
 それから翔悟はやっと赤信号で止まってくれて、華子は手を膝について身体を支えた。
「も、早いよ……廉堂君」
「あ……仁科さん?!」
 ぐたりと頽れる華子に翔悟は焦った声を上げた。
(いくら恋心を自覚したとは言え……これは別)
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